松山家庭裁判所宇和島支部 昭和41年(少)33号 決定 1966年2月21日
少年 M・Z(昭二六・一〇・七生)
主文
少年を初等少年院に送致する
理由
非行事実
別紙非行事実一覧表のとおり。
罰条
別紙一の事実については刑法第二四〇条後段、第六〇条
二、四および五の事実については刑法第二三五条第六〇条
三の事実については刑法第二四九条第二五〇条第六〇条
情状および措置
一、少年は資質および環境の両面に亘り種々問題があり、再非行の危険性が強く、強度の矯正教育を施す必要がある。その問題点は家庭裁判所調査官の少年調査票(特に意見欄)、および少年鑑別所の鑑別結果通知書に記載してあるとおりである。
二、本件非行はそれ自体悪質重大で、少年の悪性を表明しておりこのまま少年を社会に復帰させることは妥当ではなく、施設に収容して反省せしめこれを保護教育する必要がある。そしてその収容すべき施設については少年の年齢、犯罪的傾向等より初等少年院を相当と認める。
よつて少年法第二四条第一項第三号、少年審判規則第三七条第一項、少年院法第二条により少年を初等少年院に送致してその更生を計ることとし主文のとおり決定する。
(裁判官 乗金精七)
別紙
非行事実一覧表
一、少年Aと少年M・Zの両名は、宇和島市○○○×番地○○○所在の○○児童相談所に要一時保護児童として保護されていたものであるが、同所より逃走することを企て、逃走するにはその資金生活費等を必要とするところから、同所の宿直員を殺害して金品を強奪して逃走しようと共謀のうえ、昭和四一年一月○日午後八時頃、同所の食堂兼学習室において、○下○徳(当一四年)をして同所の職員(心理判定員)で宿直勤務中の伊○卓(当三三年)に「テレビのチャンネルを切替えてもらいたい」旨言わしめて同人を誘い出し、同室においてチャンネルを切替えようとしている同人の背後より先づAにおいて所携の野球用バットでその頭部等を十数回殴打し、更にAの命を受けたM・Zにおいて前記伊○の背面頸部等を数回殴打する等の暴行を加えてその反抗を抑圧し、更に両名は同様逃走を企てていた○田○安(当一一年)と共に同人のズボンポケット内から現金一、〇七四円位在中の財布時価二〇〇円相当一個、同所の事務所などから同所職員三〇学外二名所有の現金二八〇円位および万年筆など九点時価六、八二〇円相当、更に同所々長薬○寺○一管理にかかる懐中電灯他二点時価四〇〇円相当を強奪し、前記暴行によつて前記伊○卓をして頭蓋骨粉砕骨折による骨片圧迫とこれに伴う硬脳膜下出血の脳表圧迫により神経中枢の圧迫を受けその支配下にある肺臓心臓機能の停止により翌○○日午前一時一〇分同市△△△○○○□□医院において同人を死亡させてその目的を遂げ
二、少年Aと少年M・Zとは共謀して、昭和四一年一月×日午後七時四〇分頃、宇和島市○町○番地○辺○勝方前路上において、同人所有の第二種原付スーパーカブ号一台時価二〇、〇〇〇円相当を窃取し
三、少年Aと少年M・Zとは共謀して、同日午後一〇時頃、愛媛県宇和郡○○町映画館前路上を通行中の一七歳位の高校生を呼び止めて、同人に対し「兄ちやん少し金を貸してくれ」と申向けたところ、これに応ずる様子が兄えないので腹を立ていきなり手拳で同人の顔面を殴打し、同人を畏怖させ、金員を喝取せんとしたところ、M・Zが「人が来たからやめい」と言いその隙に逃走されて未遂に終り
四、少年Aと少年M・Zとは共謀して、同月△日午前三時頃、八幡浜市○○△×××○泉○見方店舗において同人所有の唐饅菓子四箱一、〇〇〇円相当、男物マフラー一本二〇〇円相当を窃取し
五、少年Aと少年M・Zとは共謀して、同日午前四時頃、同市○町○丁日○○○信用金庫前路上において、通行中の○井○キに対しM・Zが前記スーパーカブ号を運転して近づき後部座席に乗つていたAが同人所携の手提袋一個一、〇〇〇円相当、在中財布一個三〇〇円相当、印鑑二ケ三〇〇円相当、現金八〇〇円位、弁当箱二個三五〇円相当、鍵二個をひつたくり窃取し
たものである。